粘弾性体¶
OpenSWPC
では粘弾性体モデルとしてGeneralized Zener Body (GZB)を採用し,複数の異なる緩和時間をもつ粘弾性体要素を並列に繋ぐことで,広い周波数帯域において一定の値を持つモデルを実現している.
GZBの構造模式図.
互いにパラメタの異なるZener Body(矩形内)が複数並列で結合している.
このことにより,実体波速度は物理分散性を持つことになる(e.g., Aki and Richards, 20021).そのため,構造モデルがどの周波数における値なのかを指定するための基準周波数をパラメタとして与える必要がある.
Figure
Qの周波数依存性の例.nm=3
の場合の各粘弾性体構成要素の周波数依存性(破線)と合計された全体のQモデル(実線)の周波数特性を示す.青色の領域がfq_min
(左青線)とfq_max
(右青線)で指定されたQ値一定の周波数範囲.
この粘弾性体は,弾性係数とそれぞれに対応する緩和関数
を持つ.ただしここで,はP波のrelaxed modulus, はS波のrelaxed modulusである.また,とはそれぞれP波とS波のクリープ時間,は緩和時間と呼ばれる.GZBはZener粘弾性体を個並列に接続したモデルである.異なる緩和時間をもつ粘弾性体モデルを多数並列させることにより,広い周波数帯で現実的な減衰をもつ媒質を表現することができる.また,クリープ時間をP波とS波で独立に選ぶことにより,独立な内部減衰, を指定することができる.このモデルの構成方程式は
となる.構成方程式に畳み込みが現れるが,メモリ変数法(Robertsson, 19942)を用いることでこれを複数の1階の微分方程式の組に帰着させて数値計算を行う.また,(Blanch, 19943)の-methodにより,以下に述べる最小限のパラメタから,指定周波数範囲で値がもっとも平坦になるようなモデルを自動的に選択する.
Parameters
- **
fq_min
** - 粘弾性体一定値モデルの最小周波数
- **
fq_max
** - 粘弾性体一定値モデルの最大周波数
- **
fq_ref
** - 粘弾性体一定値モデルにおいて速度値が定義される基準周波数
図に示すように,パラメタfq_min
とfq_max
の間の周波数帯で,Q値がほぼ一定の値をとる.その外側では,周波数の2次で減衰が小さくなる.このQモデルは複数の粘弾性体(図中点線)の重ね合わせで実現される.そのため,より広帯域でQを維持するためには,メモリ変数の数(埋め込みパラメタNM
)を増やす必要がある.しかし,これは計算量とメモリ使用量の大幅な増大を招く.設定したパラメタ下でのQ値の周波数依存性は,プログラムqmodel_tau.x
で調べることができる.
広帯域で平坦な減衰モデルを採用すると,物理分散性により実体波の速度が周波数に依存するようになる.そこで基準周波数fq_ref
を定義し,構造モデルで入力された速度は周波数fq_ref
での速度であることが仮定される.
-
Aki, K., & Richards, P. G. (2002), Quantitative Seismology, 2nd Edition, University Science Books. ↩
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Robertsson, J. O., J. O. Blanch, and W. W. Symes (1994), Viscoelastic finite-difference modeling, Geophysics, 59(9), 1444–1456, doi:10.1190/1.1443701. ↩
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Blanch, J. O., J. O. Robertsson, and W. W. Symes (1994), Modeling of a constant Q: methodology and algorithm for an efficient and optimally inexpensive viscoelastic technique, Geophysics, 60, 176–184, doi:10.1111/j.1365-246X.2004.02300.x. ↩